キャリア

「在り方」を考える時のこと。

乳がん手術の入院期間と手術後の治療、アピアランスケアについて

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 今まで大きな病気もけがもなく過ごしてきたので、手術も入院も、全てが初めて。乳がんの告知・検査の後の経過と回復まで、最後にまさかの重い局面を迎えて、さすがに私も人生いろいろ考えました…。

【入院中の治療と生活】

 乳がんに気づいてから4か月半が過ぎ、いよいよ入院です。私の場合は入院から3日目が手術で、約10日間の入院生活でした。手術後は、皮下にたまる出血や浸出液を体外に排出するための管(ドレーン)が入っていて、その排出量が30ml/1日を下回ってきたら管を抜き、翌日に退院となりました。

  • 1日目:お昼過ぎに病院に到着。手続きをして館内・病室の説明を受けた後は自由時間。
  • 2日目センチネルRI検査、画像検査と、エコーによるマーキング(執刀医から切る箇所の説明)、全身麻酔の説明。
  • 3日目手術とセンチネルリンパ節生検(約2時間ほどでした)。バストバンド装着は、この手術後から退院まで続きます。
  • 4日目朝にドレーン以外の点滴等の管がとれました。
  • 5日目以降1日3回ドレーンの排出液チェックと健康観察(血圧、検温)以外は自由。胸部以外のシャワーも可能になりました。ドレーンにつながる排出液のたまるパックは斜め掛けにしたドレーンバッグに入れていつも一緒なので、シャワー時も濡れないように慎重に…。手術後3日目にリハビリの指導も始まります。
  • 10日目前日(手術後7日目)にドレーンの排出液量が30mlを切ったのでドレーンの管を抜いてもらって、午前中に退院!!!帰りの高速バスを待つ間、病院1階のタリーズでコーヒーとおやつを解禁!がんばった自分へのご褒美。

 手術は全身麻酔なので、名前を呼ばれて目を開けたら終わっていた、という状況でした。手術室を出てすぐに悪寒が激しくなり熱が上がりましたが、夕方には下がりました。発熱は身体の炎症に対する反応で手術後によくあることらしく、長引かなければ心配はないそうです。傷痕の痛みも落ち着いていて、痛み止めを入れてもらったのは手術後すぐの1回だけでした。傷口の引っぱられる感は残っていますが、リハビリが始まってからはなるべく腕を動かすようにして、少しずつその痛みも和らいでいきました。

 入院中は時間がたっぷりあるので、病院内にある図書室にほぼ毎日通って過ごしました。入院初日から読み始めたのは、西加奈子さんの『くもをさがす』。これは、2021年コロナ禍の最中、カナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者の、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を綴ったエッセイです。私はこれを読んだおかげで、再建についていろいろ悩んでいたことやモヤモヤしていたことが腹落ちして、スッキリした気持ちで2日後の手術に臨めました。手術前に読めて良かった!しかも、今回の私よりハードな手術を受けながら「日帰り」って?!、しかも自分でドレーンの処理をするの?!という、カナダと日本の医療の違いにもビックリ。病気を通して、様々な人との関わりの中で人生の選択をしていく様は、乳がんの方もそうでない方にも、人生に気づきを与えてくれる、おすすめの1冊です。

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【入院費用】

 治療費(手術費用、麻酔やリハビリ、検査等)は高額療養費制度のおかげで本当に助かりました。今回の私の手術は全摘出とセンチネルリンパ節生検で、どちらも保険適用の治療のため自己負担限度額ですみました。治療費以外に必要なのが、入院日数分の室料や食事代。その他にも、タオルと入院着のレンタル費用、生命保険会社や勤務先に提出する診断書作成費用など。これらは高額療養費制度の対象外なので、全額自己負担です。私の場合、治療費以外にかかった費用は約10万円でした。

 今回の病気で、治療費や検査費用の支払い、入院費用、働けない間の生活費…いざというときのための蓄えの必要性を改めて実感しました。医療保険も入っておいてよかった…。

【退院後の治療】

 針生検の際に私の乳がんは「ルミナル」というタイプだと分かっていたので、手術後はホルモン治療かな、、と漠然とかまえて聞きに行った病理検査の結果。手術から約1カ月後、診察室のモニターに大きく映し出されたのは、手術で私の身体から取り除いたモノを染色した画像でした。そして、先生から告げられたことは3つ。当初15mm程度といわれていたしこりが、実は下の方で広がっていて8cmもあったということ。さらに、乳管がんだけでなく小葉がんも混在している、ということ。リンパへの転移はなかったものの、しこりのサイズが5cmを越えたためにステージがひとつ上がることから、ホルモン治療と合わせて抗がん剤を検討した方が良いかもしれないということ。

 この最後の一言は全くの想定外だっただけにとても重くて、手術が終わったら治療もほぼ終わりと思っていた私にとっては、怒濤の展開。そう簡単には終わらせてくれないのだな…。抗がん剤治療をするかどうかについては、遺伝子検査(オンコタイプdx)を受けてから判断することをすすめられました。この検査は、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性または1〜3個まで、の浸潤癌の乳がんが対象で、早期乳がん再発にかかわる21種類の遺伝子を解析し、10年以内に再発するかどうか、その確率を予測するというものです。検体をアメリカに送って検査するため結果がでるまで3〜4週間近くかかり、保険適用になったとはいえ費用も高額です。でも、本当に自分にとって抗がん剤が必要かどうかを見極めることができて、その結果によっては負担の大きな治療をしなくてすむのなら…と、検査を受けることにしました。

 検査結果を待つこの1ヶ月は、本当に落ち着かなかった…。もし抗がん剤になったら最低半年間は治療にかかることになり、その間は今の仕事もできなくなります。何か在宅でできる仕事を探そうと検索したり、時にはウィッグを探してみたり、もしそうなった時の備えを探して何とか安心しようとする、でも次から次へと不安はやってきて、自分の気持ちを支えるだけで精一杯でした。健康でいられること、日常を過ごせること、自由に外を歩けること、そんな何気ないひとつひとつのことにもありがたみを実感する日々。そして訪れるかもしれない治療と副作用への恐怖。先の予定は一切入れられず、毎日が不安との闘いでした。

 トランプ大統領の影響で検査結果は予定より2週間遅れとなり、手術から約2ヶ月半後、朝から内心ドキドキしながら仕事をした後に病院へ。結果、再発スコアは13と低く、抗がん剤の効果も1%未満とあって、抗がん剤の治療は見送ることになり、本当にホッとしました。よかった・・・。

 手術から1ヶ月後の病理検査結果が出た日にホルモン治療が始まっていたので、今後もそれが継続となりました。「タモキシフェン」を一日一錠服用しています。ホットフラッシュとか多汗といった更年期症状に似た副作用が出るらしいのですが、この夏の異常な暑さに、副作用なんだか暑さなんだか・・・よく分からないまま、私の場合、今のところはあまり目立った副作用は出ていません。

 ここから先は3ヶ月に1回のペースで経過観察となるらしく、投薬と、血液検査を受けています。

【アピアランスケア】

 治療を続けながら社会参加等を継続するための支援として、自治体によっては「アピアランスケア助成事業」を実施しているところもあります。ウィッグや補正下着・補正パッド、人工乳房、乳頭といったエピテーゼ(補正用人工物)など、がんにり患された方が、がんの治療に伴うアピアランス(外見)の変化に対処する目的で購入した補整具等の購入費用の一部を助成する制度です。こんなありがたい制度が今あるんですね!購入を検討している方はご自身の自治体の制度を一度調べてみることをおすすめします。

 乳がんの告知を受けてから最初に買ったのが、検査用に便利な前開きの下着。締めつけ感もないので、手術後も傷が落ち着くまでは重宝しました。私は先輩に教わったユニクロのものをセレクト。(店頭にないので、ネットで注文→近くの店舗で受け取りました)もちろん、パッドも入れられるようになっています。

 

 手術後2ヶ月ほどして傷が落ち着いてきてから、普段用の下着を購入しました。今まで使っていたものはポケットがないのでパッドを入れられず、パッドを挟み込んでも動いている間に飛び出して落ちてしまい…やはり専用のもの(パッドを入れられるポケットが全体についたもので胸全体を覆う下着、もしくは、従前の下着に挟み込むための「みみ」がついたパッド、など)が必要みたいです。病院で教わったワコールのリマンマルームを予約して、実際に試着して選びました。デザインの違いでフィット感が大きく変わるので、自分の身体のラインに合うかどうかを確認してから購入することをおすすめします。

 

 パッドについては、綿・ウレタン・ビーズ素材やシリコンの安価なものから、よりリアルで高価なもの(人工乳房で、水泳や温泉に対応するとかしないとか、色やサイズをオーダーメイドできるものとか)まで様々あります。自分の形に合わせて手作りされている方もいらっしゃるし、つい最近では無印良品からも新商品で販売開始されました(発売とともに即完売です)。自分で下着を改良したりパッドを手作りする器量も気力もなかったのと、家族の目にも触れること(寝ている間は外しているし、たぶん私はお風呂場で洗ってそこに置いたまま乾かしちゃうので)を考慮して、私はドクターブレストを選びました。

 ホームページの画面で見ていた感じではハードな印象でしたが、届いたものはクニャクニャしていて、裏返すとまるで「クラゲ」みたい。重くなく、すき間があるので肌に密着することもなく通気性もあり、様々な面でほどよいです。カラフルで星や花形にカットされているのも、「いかにも」な感じがなくてポップでかわいい!何より、手術してからずっと片側だけぺったんこだったのが左右バランスとれたことに感動!気にしないようにしていても本当はどこか気になっていたんですよね…ちょっと外出してみようかな、と思えるようになって、元気をもらえました。素敵なものを作ってくださり本当に感謝です。

 

 約7ヶ月におよぶ乳がんの治療も、ようやく一段落しました。ここまで多くの方に支えていただいたことに心から感謝しています。助けていただいた命は、きちんと繋いでいきます。お酒もほとんど飲まないし、たばこも吸わない、食生活も自炊(しかもお昼は完全栄養食である給食)で、仕事柄ほどよく身体も動かしているし、がんになる要因が全く思い当たらないだけに、いまだに自分がり患したことが信じられないけれど、毎日目にするこの身体がまさにそれを物語っています。いつ誰がなるかなんて分からないのが病気。そして、自分の健康は自分だけのものではなくて、自分が倒れたら、家族の生活までもが一気に不安定になってしまうことが、今回身にしみてよく分かりました。だからこそ、「忙しい」「怖い」「まだ大丈夫」といった言い訳をせずに、自分の身体ときちんと向き合うことが大切で…これからはもっと自分の健康を大事に生活していこうと誓いました。まだまだ私も楽しく暮らしていきたいし!

 日本人女性の乳がんは増加傾向にあります。早期発見であればあるほど治療の負担も小さくてすみます。10月はピンクリボン月間、女性のみなさん、ぜひ検査を受けてください!!

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